長期間スポーツを続けることにより体の一定の部位に負担をかけ続けて起こる障害をスポーツ障害といいます。練習に熱心に取り組むあまり体を痛めてしまい、休んでも痛みが取れずに長期間練習に復帰できず来院するケースが多いです。スポーツ障害は一度発症すると治りが悪いといわれますが、本質の部分から解決すると早期に競技に復帰することができます。ここでは当院のスポーツ障害の考え方と取り組みをお伝えします。ご参考にして下されば幸いです。
スポーツ障害の原因とは
筋肉は引っ張られたり捻じれたり、ゴムのように伸び縮みします。そのとき顕微鏡レベルで筋肉の繊維には微細な損傷がおこります。それはスポーツだけではありません。歩いているときや洗い物をしているときなど、どんな動作でもおこります。つまり、痛みが無くても顕微鏡レベルでは筋繊維はいつも微細損傷と修復が繰り返されているのです。オスグッドやシンスプリント、疲労骨折などのスポーツ障害は医学的には『使いすぎ症候群(オーバーユース)』と言われ、体を酷使することで発生します。スポーツのときは日常生活よりはるかに大きな負荷が同じ部分に掛かります。体が健康ならその疲労が翌日までに回復し問題はありません。生活が忙しすぎて回復しないまま積み重なると、次第に痛みとなって現れます。①同じ部分に負荷が繰り返し掛かる、②体が不健康で翌日までに回復できていない、③日常の過ごし方が悪い、これらがスポーツ障害の原因なのです。
スポーツ障害とスポーツ外傷との違いとは
スポーツによって起こるケガは、“スポーツ外傷”と“スポーツ障害”の2つに分類されます。スポーツ外傷とは『プレー中に足首を捻った』『転倒したとき肘を脱臼した』というように、明らかな受傷起点があるケガを言います。脳震盪や出血、骨折、脱臼、捻挫、などが当てはまります。これに対し、スポーツ障害とは『いつのまにか肩が痛くなった』『繰り返しジャンプしていると足が痛くなる』といったように、はっきりとした原因が思い当たらないのに同じ場所が痛むものを言い、使い過ぎによって起こることが多いようです。なぜ分けるかというと、処置が異なるからです。外傷の場合はすぐに応急処置が必要になります。また緊急に医師の診察を受けなければならない場合もあります。スポーツ障害は過労や睡眠不足、栄養の不足が原因で起こるため、緊急を要することはありません。体のケアや栄養の知識の獲得、日常生活の改善が必要になります。同じケガでも応対が違うのです。
こんなときに起こりやすい
スポーツ障害が起こるときは、体の活動量が非常に大きくて、回復量が非常に少ない時です。例えば普段練習や勉強で体も頭も疲労困憊。遅くに帰宅して食事もゆっくり摂れず、お風呂もシャワーで済ませてしまう。就寝時間も遅くて十分に回復せずに翌朝を迎えてしまう。このような毎日を繰り返していときに起こりやすいです。ミクロからマクロと視点を広げるてみましょう。世界はいくつかのシンプルな法則によって運行されており、その中核を成すルールに「二極性」というものがあります。素粒子から宇宙まで、この世界はすべて相反するエネルギーが微妙に釣り合いながら共存しています(例。プラスとマイナス、SとN、発信と受信、支出と収入、男と女など)自然界のみならず、宇宙の縮小版である地球にも、社会にも、体の内部にも当てはまります。 そのバランスが取れているときは物事はうまく運びますが、一方のみ強くなると崩壊の方向へ向かいます。それがスポーツにおいては活動量と回復量の均衡が非常に大切です。このバランスが乱れているときスポーツ障害は起こりやすくなります。
スポーツ障害になる人とならない人との違いは
同じチームで同じ内容の練習をしているのに、痛めてよく休む選手がいれば全く大丈夫な選手もいます。なぜでしょう。答えは簡単です。エネルギーの消費と回復のどちらが多いのかどうか、です。練習や勉強で消費した分をその日のうちに回復していれば問題は起こりませんが、回復しないまま日々を過ごすとやがてエネルギーダウンで故障を起こしてしまいます。人間は体と心の状態、それを囲む環境の影響を受けます。睡眠・栄養・入浴で常に体を健康に戻すこと、プラス思考・主体性・良いイメージで物事に取り組むこと、ご家庭のリラックスできる環境づくりがあることが大切です。それらを総合して、いつも高いエネルギーを保有しているかどうかが痛める選手とそうでない選手との違いなのです。練習と回復させる習慣は両輪をなすもの。その意識を持って選手も親御さんも取り組むと、痛みでプレーできないと悩むこともなくなることでしょう。
体の使い方にも原因が
スポーツ障害は、オーバーユース(使いすぎ)により起こりますが、実は体の動かし方にも問題があるのです。動かし方というと、フォームと思うかもしれませんがそうではありません。本質としては、動物は獲物を捕えるために進化してきました。
チータが全力疾走で獲物を追いかけている姿をテレビで観たことがあると思いますが、チータがフォームを気にしながら走っているでしょうか?ただ獲物という「対象」に集中しているだけです。「対象」に向かって動かすことが自然で体に無理のない動きになります。人間も動物ですので例外ではありません。獲物に向かって走り、矢を投げるために骨や筋肉があるのです。
もし対象ではなく、自分に集中してしまうとどうなるでしょう。体は動きが抑制されるので、筋肉は硬くなり、疲労しやすくなります。そのためエネルギーのロスが大きくなりスポーツ障害の原因となってしまいます。プレーの時に意識を自分の身体ではなく、ボールや相手選手など対象に向けることが重要なのです。
早く治すには
スポーツ障害で悩まれている方は、長期間練習に参加できず、患部に負荷のかからないトレーニングを行いながら経過観察の状態がでしょう。そしてほとんどの方が複数の医療機関で診てもらっても痛みが取れず、 一体いつ復帰できるのかと考えていることでしょう。スポーツ障害の原因は『体が不健康でエネルギーダウンしている』『疲労が翌日まで残っている』ことにあるからです。このふたつが改善しない限り、練習を休んでも腕の良い先生の治療を受けても変わりません。 体の回復力が上がらないので痛みは長引きます。
早く競技に復帰するためにまずすべきことは、①酸化した体を早く健康状態に戻す、②日常生活を見直すことです。当院では健康の基本条件(酸素・水・ミネラル・ビタミン)、睡眠、入浴を常に重要視しているのは、それらが回復するための基本だからです。その上に施術やバランス、体の使い方の改善に取り組むと早く改善することができます。ケガや痛みは自分の体の健康状態や普段の過ごし方の結果です。自分で取り組むことが、早期に競技に復帰できる近道なのです。魔法の薬はありません。そのために当院では正しい知識をみなさんにお伝えし、ご自身で実践していただくことを重要視しています。
予防するには
スポーツ障害の本質は、エネルギーの消費量>回復量です。予防するためには消費<回復を作るシステム(=習慣)自分で獲得することです。メジャーリーグのイチロー選手はたくさんの偉業の成し遂げただけでなく、ケガで長期離脱しないことでも知られています。それは長く活躍できるよう日常のケアの習慣を徹底しているからと言われています。練習だけでなく、表に出ない良い習慣があるのです。 ケガをしてしまうと、能力が発揮できないことを一番理解しているのでしょう。
ケアの習慣は一流選手でなくても誰でも作ることができます。スポーツ障害の痛みが出るときは日々の習慣が間違っていることを体が教えてくれています。一日の過ごし方を細かく見直してみましょう。それは自分がレベルアップするきっかけにもなるのです。そして、より質の高い生活に変わることで、パフォーマンスもかわり、更に上の世界に行くことが出来るのです。