骨折と聞くと「大怪我だから時間がかかる」というイメージを持っていることでしょう。時間がかかるのは、体が不健康なまま安静にしているだけだからです。積極的に健康な状態に戻るように取り組むと、細胞の働きが活性化され早く患部を治癒させることができるのです。
早く治すために特別なことや目新しいことをする必要はありません。大切なこと(=本質)を徹底して行うだけでよいのです。それは私たちの身の回りに存在しており、誰でもできることばかりなのです。その「大切なこと」とは昔から言い古されたことばかりですが、早く治して競技に復帰するために大切なことばかりです。みなさまの参考になれば幸いです。
「健康の基本条件」を揃える
健康の基本条件とは、空気・水・ミネラル・ビタミンです。細胞が活発に働くための非常に大切な条件です。私たちの体には、体内を元の状態に戻し安定させるというメカニズムが備わっています。それをホメオスタシス(恒常性)といいます。健康の基本条件が揃うと、ホメオスタシスが正常に働き、損傷箇所を早く修復してくれます。この4つは体内では産生できないので、積極的に摂取するようにしましょう。
空気 | 細胞の一番大切なエネルギーが酸素です。 酸素摂取量を増やすために、呼吸法を行いましょう。 |
水 | 体の疲労物質は尿として排出されます。 良い水(分子が細かい水)をたくさん摂取し、トイレに行く回数を増やしましょう。 |
ミネラル | カルシウムは骨の材料です。 水によく溶けるL型乳酸カルシウムを摂取しましょう。 |
ビタミン | 傷の修復時に消費されます。普段の手作りの食事を食べていれば問題ありませんが、 総合ビタミン剤などでさらに補いましょう。 |
Point
この4つは聞きなれたものばかりです。「本当にこんなことでよくなるの?」と思うかもしれませんが最低限の必要条件です。しっかり摂取して細胞を元気にしましょう。
安静・固定期間は最小に
骨折した時、患部を固定して安静にします。長期間固定や安静にすると、筋肉や腱、関節が固くなり動かなくなる「拘縮」という状態になってしまいます。拘縮が起こると、元の状態に戻すのに非常に時間がかかり、競技への復帰が遅くなってしまいます。拘縮を防止するためには、安静・固定の期間は最短にとどめ、関節の運動を早期に始めましょう。
そのときギプスで固定中であっても、骨折部の安静を保ちながらそれ以外の部位は早期から動かすことで、骨折部の血行もよくなり骨の癒合を促進することができます。大きく動かす必要はありません。手指のグーパー運動、足首の曲げ伸ばしなどが代表的な運動です。全く動かせない場合でも少し筋肉に力を入れるだけでもいいのです。
骨折した部位の周辺は炎症による腫れと、固定して動かせないためにむくみやすいのですが、手や足の指を動かすだけでも腕全体、脚全体の血行が良くなってむくみの改善につながります。少しずつでも動かしていきましょう。
Point
患部が治癒しているのに、拘縮が残ったためプレーに支障をきたしているケースが多くみられます。拘縮をいかに抑えるかが早期復帰の大切なポイントです。
L型乳酸カルシウムの摂取
カルシウム(Ca)は骨の材料です。材料が豊富にあるほど、修復もスムーズに進みます。十分にCaを摂取しましょう。また、水溶性が高いCaを摂取するようにしましょう。
口から摂取したCaは小腸の粘膜を通して体内に吸収されますが、その際イオン化(水に溶けた状態)されることで吸収されます。つまり水に溶けていないと分子が大きすぎて粘膜を通ることができません。イオンの形になることで、初めて体内に吸収され有効に使われるのです。ですから水によく溶けるCaを摂取することが大切なのです。
様々な種類のCaがありますが、水への溶解度が高く、吸収率が非常に良いL型乳酸カルシウムがお勧めです。
Point
普段の食事だけで必要なカルシウムを摂取することは非常に大変です。サプリメントで補う方が効果的に摂取できます。
体内を弱アルカリ性に
アルカリ性とか酸性という言葉を理科の授業で習ったことがあるとおもいます。これらは水溶液(物質を水に溶かした液)の性質の名前です。お酢やレモン汁のようにすっぱい味がするものは酸性。苦い味がするものはアルカリ性です。健康な体の体液はph7.35のアルカリ性で出来ています。人はこのph7.35の数値を保つ働きがあります。これをホメオスタンスといい、その状態が自然治癒力がいちばん働く状態です。折れた骨を早く治すためには体液が弱アルカリ性であることが大切です。
体が弱アルカリ性の状態かどうかは、朝起きるときに分かります。朝目覚めてすぐにスキッと起きれる時は弱アルカリ性の状態です。逆に、体がだるくて、なかなか起きれない時は酸化している状態です。弱アルカリに戻すためには、カルシウムの摂取が効果的です。カルシウム自体がアルカリ性の物質だからです。酸化した体を、もとの健康な弱アルカリ性に戻してくれます。体液を弱アルカリ性にすること、これも骨折を早く治すコツです。
軽い振動を与える
骨には、骨芽細胞という骨形成を担当する細胞があります。生物の骨形成は適度な運動によってが促進されることが知られています.機械的刺激が骨芽細胞など刺激し、血清中のカルシウムを骨に沈着させ骨形成を促進するのです。小さな頃から外でよく遊ぶとしっかりした体になるというのは本当で、走り回ったり飛び跳ねたりする衝撃が機械的刺激となり骨が成長するからです。
機械的刺激は骨折の治療にも有効です。以前、サッカーワールドカップの大会前、足を骨折した有名な選手がいました。彼は超音波治療を受けることで早く治癒し、大会に間に合いました。超音波という微細な機械的刺激がが治癒を早めたのです。このように、安静・固定だけでも、人間が持つ自然治癒力で回復しますが、軽い振動を与えることは回復の手助けになるのです。
Point
医療機関で超音波治療を受けるという手段もありますが、自分の指でトントンとキーボードを叩くように軽く患部を触るだけでもOKです。
充分な睡眠時間
成長ホルモンという体の成長に関係しているホルモンがあります。成長ホルモンには損傷を修復する免疫細胞の活動を活性化します。だから、成長ホルモンを十分に分泌させるかが早く治すために必要です。
成長ホルモンが活発に分泌する時間帯というものがあり、22時~2時くらいの間と言われています。この時間帯に睡眠時間を合わせることが大切です。また免疫細胞は夜間睡眠中に活発に働ことから、夜に長く寝ると作業時間も長くなるので回復も早くなります。早く就寝し朝までぐっすり眠り、免疫細胞にたくさん働いてもらいましょう。「寝る子は育つ」といいますが、「寝る子は治る」なのです。
Point
また、体は睡眠中にいろんなことを記憶します。就寝前にできるだけ心身の状態を整え、良い状態を記憶させましょう。しっかり入浴し、カルシウムの摂取や呼吸法などを行うと良いでしょう。
自律神経のバランスを整える
自律神経とは自分の意思とは関係なく刺激や情報に反応して体の機能をコントロールしている神経のことです。例えば心臓の鼓動や瞬き、発汗、消化、呼吸などは無意識に行ってくれます。傷の修復も同様です。転んで擦り傷ができてもいつのまにか治っています。損傷部に血液を通して栄養を供給し廃棄物を回収する命令を出したり、細胞が効率よく作業するように自律神経がすべてを調節しています。自律神経を整えることで、効率よく修復作業を行うことができます。自律神経は私たちが生命を保てるように、これらの動きを調整する役割を担っているのです。
自律神経は交感神経と副交感神経に分けられます。このふたつがバランス良く機能すると、役割を分担して自動的に調整してくれますが、乱れるとスムーズに進まなくなります。細胞が効率よく作業するためには自律神経のバランスを整えることが欠かせないのです。自律神経は自分で意識して動かすことはできませんが、唯一呼吸を通してコントロールすることができます。自律神経を整えるには呼吸法が最適です。
Point
生命は自ら元に戻ろうとする力を持っています。その力が発揮できるように命令を出すのが自律神経なのです。自律神経という言葉はよく耳にして、新鮮味のない言葉かもしれませんが、非常に大切な役割を担っているのです。
エネルギー生産を増やし消費を減らす
企業や家庭のように体にもエネルギーの収支バランスがあります。出費の方が多くて赤字状態なら患部へ廻されるエネルギーが減らされるので修復に時間がかかります。家計が赤字で家の修繕にお金が廻せないことと同じです。収入が多くて黒字状態なら患部にも豊富にエネルギーが供給されるので早く治ります。貯金がたくさんあればすぐに修理できるのです。
患部を安静にすることは、出費を減らすだけになってしまいます。収入は増えないので時間はかかります。健康状態を改善して収入を増やすように積極的に取り組むことが治癒への近道です。支出を減らして収入を増やし早く黒字を作りましょう。そのために練習や勉強で忙しすぎるときは、スケジュールを見直しましょう。どうしてもトレーニングしなければならないときは、激しいトレーニングは避けるべきです。たとえ患部以外のトレーニングでも、体力を消費すると損傷部位に廻されるエネルギーが少なくなりからです。
ここでお伝えしていることは、収入を増やす方法です。健康の基本条件を揃え、睡眠、休息、栄養を十分に摂り、積極的に収入を増やしましょう。
Point
エネルギーの出入りは森羅万象の本質です。体も家庭も企業も国家もこのメカニズムで成り立っているのです。そのバランスをと整えることが早く治すポイントなのです。
良いイメージ
メンタルトレーニングで競技力アップを目指す技法に『イメージトレーニング』というものがあります。人間の脳は文字や言葉よりも映像のイメージのほうが圧倒的に情報量が多いのです。例えば選手に競技しているイメージをしてもらい、筋肉を筋電位計で測定すると、実際にプレーを行っているときと同じように筋肉に電気信号が流れることが研究で分かっています。
つまり脳がイメージしたとおりの情報というエネルギーが全身の細胞に送られているのです。「楽しい、ワクワクする」といった気持ちは、体のエネルギーや集中力を高め、能力を発揮させます。このようなポジティブな気持ちで毎日を過ごすことが大切です。また、より細かなイメージはその効果を高めてくれます。「べストのプレーをしている」「試合で大活躍している」など、詳細なイメージを湧かせましょう。練習していなくても細胞はその情報を受け取り記憶しているのです。毎日時間があるときや、就寝時など繰り返しイメージしましょう。早く競技に復帰するための手助けをしてくれます。
体は脳がイメージしたとおりになります。だからどんなイメージを沸かせるかで治癒力も大きく変わります。。良いイメージを持つこと治癒時間を短縮することができます。
Point
身心一如(しんじんいちにょ)という言葉があるように、体は脳がイメージしたとおりに変化します。「自分はできる!」と強い心を持って取り組んで下さいね。
周囲のご協力
早く治そうとするとき、ご本人の力だけでなく親御さんやご家族、顧問の先生のご理解など、周囲のご協力があるとスムーズに進みます。そのとき皆さんの方針が同じであることが望ましいです。たとえば学生は勉強、練習、塾などがあるでしょう。そのとき何を優先させるかです。体を最優先と置くと通院やセルフケアに時間をかけなければなりません。他に優先順位を高く置くとそれにエネルギーを奪われて治癒が遅れてしまいます。どれが大切なのかはその時の状況により変わります。学生最後の大会が控えているときは体が最優先となるでしょうが、試合がないときは違ってきます。将来のキャリアを考えると、今無理して試合に出るのはどうか、という意見も出ることでしょう。大事なことは本人、親御さん、顧問の先生、医療機関と意見を交換し皆さんの方針を一致させておくことです。方針がはっきりすると早く目標に到達できるのです。全員が一致することが望ましいですが、難しいときは本人と親御さんだけでも一致させましょう。そして決めたら本気で取り組みましょう。
Point
仕事も勉強もスポーツも、疲れたままでは何をやってもうまくいきません。何かに取り組むとき、健康というベースが一番大切なのです。心身の健康を最優先に持ってくると、自然とスムーズに進むのです。健康であることが物事の本質なのです。