体内の発電所
みなさん学生時代に理科の授業でミトコンドリアを習ったことがあると思います。ミトコンドリアは「身体の発電所」といわれ、細胞が活動するために必要なエネルギーを生産する働きをしています。人の身体には約60兆個の細胞があり、生命活動をおこなっています。ミトコンドリアはこれらの細胞全てに数百~数千存在する細胞小器官です。私たちが肺から吸い込んだ酵素は、血液によって体内の細胞に運ばれて取り込まれ、ミトコンドリアによって糖や脂肪を燃やす燃料として使われることになります。その分解していく過程でATP(アデノシン三リン酸)というエネルギーを放出する物質を作り出します。私たちはそのエネルギーを利用することで、体温を保ち、運動や思考をして、生命を営んでいます。ミトコンドリアは「身体の発電所」といわれる所以はここにあります。
有酸素運動
ミトコンドリアは健康や老化と関係があり、その量や質を上げることで私たちはより元気に生きていくことができます。ではどうすればミトコンドリアを増やすことができるかというと「有酸素運動」が効果的です。ミトコンドリアは特に骨格筋(筋肉)の細胞の中に多く存在しています。なかでも赤筋(持久力の筋肉)に多く含まれているので、運動を長く続けることにより増えます。トレーニングとしては、ウォーキングやジョギング、エアロビクスなどの持久力の筋肉を鍛える有酸素運動が有効になります。有酸素運動は健康に非常に良いとされていますが、それはミトコンドリアを増やして体のエネルギーを上げるという理由もあるのです。ただし、有酸素運動を定期的に行わなければ、ミトコンドリアの容量は1ヶ月も経たないうちに元に戻ってしまいます。また、ミトコンドリアは加齢とともに減少していくので、継続して有酸素運動を心掛けるようにしましょう。
空腹感
ミトコンドリアを増やすには「空腹感」が大切であることが分かっています。空腹になると体は「エネルギーを作れ」と命令を出すため、ミトコンドリアが活性化するのです。また、「空腹の時間」が続くと、体は生存するために「体内にあるもの」でタンパク質を作り出そうとします。そのとき、細胞内の古くなったタンパク質が除去され、新しいものに作り変える「オートファジー」という仕組みが働きだします。このとき、細胞が内側から生まれ変わります。古くなったミトコンドリアは、大量の活性酸素を発生させるのですが、オートファジーによって、ミトコンドリアも新たに生まれ変わり、活性酸素の量が減り、体へのダメージを軽減できます。新しく元気なミトコンドリアが細胞内にたくさんあればあるほど、たくさんのエネルギーを得られ、人は若々しく健康でいられるわけです。
「空腹感」のために、食事は7~8分目を心掛けるのがポイントです。昔から腹八分目に医者要らずといいますが、胃腸の負担が減りカロリー制限できるだけでなく、ミトコンドリアの活性化にもつながっているのです。腹八分で空腹感を楽しんでみるのもいいかもしれません。また、オートファジーを機能させるには16時間以上食事を絶つ必要があります。プチ断食ですね。
寒さを感じる
寒さを感じると、細胞は「このまま寒い状態が続けば生命が維持できないから、エネルギーが必要だ」と判断し、ミトコンドリアを増やそうとします。エネルギーが足りないと細胞が感じると、ミトコンドリアは増えるようにできているからです。私が小学生の頃は、真冬の校庭で上半身裸で寒風摩擦をさせられました。子供は風の子元気な子といいますが、体は寒さを感じたほうが、ミトコンドリアが増えて元気になるよ、ということです。冬は薄着のほうが健康によいとう昔からの養生訓も意味があるのです。私は、冬の寒い朝、「走りたくないなあ」と思うこともありますが、そんなときこそ「ミトコンドリアを増やす絶好のチャンス」と考えてモチベーションを上げて外に出ます。寒さを感じることも健康法のひとつなのです。
美しい姿勢
実は、背筋をピンと伸ばして姿勢をまっすぐに保つだけで、ミトコンドリアを増やすことができます。その理由は、姿勢をまっすぐに保つ背筋にミトコンドリアがたくさん存在するからです。背筋に力が入っている状態を保つだけでミトコンドリアが増えるのです。ミトコンドリアが増えるとは、キッチンのガスコンロに例えると、ガスコンロが増えて消費量が多くなるということ。体内では酸素摂取量が増えて基礎代謝が上がり、脂肪の燃焼が多くなります。姿勢を良くすると、身体も締まってくるのです。背筋を伸ばすだけなら、座っていても、立っていても、仕事中でも、車や電車に乗っていてもできます。「美しい姿勢」はいつでもどこでもできる簡単な健康法なのです。
朝陽を浴びる
ミトコンドリアは体を動かすエネルギーを作り、細胞の新陳代謝を促進します。 だからミトコンドリアの数が減ったり生産性が落ちると、疲れやすくなったり老け込んだり、あるいは病気の原因になります。でも嬉しいことに、ミトコンドリアはいくつになっても増やすことができます。その方法のひとつが「朝陽を浴びる」こと。ミトコンドリアは細胞の核と同様遺伝子をもっていますが、その遺伝子のスイッチの引き金となるのが「光」と「酸素」です。 そもそも地球上のほとんどの生物は太陽のエネルギーなくては生きていけません。 この自然の恵みを全身に浴びることで、ミトコンドリアの遺伝子のスイッチがオンになり、体内時計がリセットされ、活発に働き始めるのです。だから、朝陽を浴びることは、ミトコンドリアの活性化につながるのです。また、太陽の光は、体内時計を整え、セロトニンやメラトニンというホルモンをつくってくれます。メラトニンは睡眠ホルモンとして、セロトニンは心を安定させるホルモンとして有名ですが、その他にミトコンドリアを減らす天敵「活性酸素」を除去する働きがあります。太陽の力というのは偉大ですね。朝起きたらカーテンを開けて朝陽をいっぱい浴びましょう。