「気」とは一体なに?

「気」という言葉はいろんなところで使われています。空気、電気、磁気、元気、雰囲気・・・etc 並べてみると、目に見えないものが多いですね。空気や電気は科学的に立証されていますが、元気や雰囲気はどうでしょう。その存在を目の前に出すことは出来ませんが、私達はなんとなく感じて、その存在を認めています。「あの人、いつも元気やな」「いい雰囲気の店知ってるで」みたいに、普通に使っています。『気』というと、なにか怪しげに感じるかもしれませんが、私達の日常生活でありふれた存在なのです。

気とは一言でいうと「エネルギ」ーです。エネルギーとは物理学の言葉で「仕事をする力」。物を動かしたり、光を出したり、熱を出したりするには、すべてエネルギーが必要なのはみなさんご存じだと思います。身体においても、毎日仕事や家事をしたり、勉強や部活をするために身体を動かしたり、頭を働かせたりするときにエネルギーが必要となります。東洋医学ではそのエネルギーを「気」と表現したのです。

気にも種類があり、東洋医学では大きくふたつに分けられています。ひとつめは「先天の気」これは この世に誕生したときに両親から受け継いだエネルギー。体質と言い換えることもできます。ふたつめは「後天の気」。誕生後、地球から得られるもの。空気や食事、日常生活の習慣などです。前者は遺伝的なものなので、自分でコントロールできませんが、後者は習慣なので自分で選択して決めることができます。このふたつの気が合わさって「元気」が産まれ、私たちは”元気”に日常で生活を送ることができます。

気は身体の根源となる重要なエネルギーとされています。社会での私たちの収入と同じで、気のエネルギーが多いほど身体の細胞は多くの給料を受け取り、たくさんの仕事ができます。筋肉活動や脳の思考、細胞の働きなど、体内で細胞が活発に働くことができます。私たちの社会で例えるなら、多くの人が十分な収入を得て人や物、お金が活発に動いている景気の良い状態なのです。当然免疫細胞の働きも活発になるので、病気やケガの治癒も早くなります。

東洋医学には「気虚」という言葉があります。これは気(≒元気)が少なく、病が発症する手前つまり未病の状態とされています。わかりやすく表現すると「エネルギーダウン」ですね。「病は気から」といいますが、これは気虚と同じことで、エネルギーが少なくなると病気の原因になるよ、という昔からの言い伝えです。

気を高める簡単な方法

私たちの生命の源となる「気」。これを高めるにはどのような方法があるのでしょうか。気を高めると聞くと、何か特別な修行が必要なのではと感じるかもしれません。ところが誰でも日常生活のちょっとした心がけで簡単に高めることができます。みなさんにいくつかご紹介していきます。

掃除・整理整頓


空間のエネルギーはそこを訪れる人に影響を及ぼします。例えば神社仏閣で参拝すると、心が落ち着いて体もスッキリします。これは元気になった証拠です。掃除が行き届き整理整頓された空間は居心地が良いものです。ご家庭でもちょっとした気遣いで空間のエネルギーを高め、疲れた体を癒すことができます。

感謝・感激する


感激して涙を流したら、とても身体がスッキリします。心に残っていた悩みが流れた、頭が明瞭になった、体が軽くなった、いろんな表現がありますが、全身のエネルギーが高まったときに感じる良い変化です。余命半年と宣言された男性が、思い残すことがないようにとエベレスト登頂という夢にチャレンジしました。そして見事登頂に成功。感激・感動し涙したそうです。帰国して検査を受けたところ、なんとガンは消えていたそうです。そんな奇跡と言われる話は他にもたくさんあります。この現象は奇跡ではなく、これが人間の持つ本当の能力であり、私たちにも備わっている力なのです。エベレストに登るような大きな事をする必要はありません。スポーツや映画、澄んだ空、美しい緑、子供達の笑顔にジーンとするだけでもいいのです。それだけでエネルギー=気が高まるのです。

良い言葉を使う

古来から日本では「言=事」と考えられ、「良い言葉は良い事を招き、悪い言葉は災いを招く」という観念がありました。肯定的な言葉にはプラスのエネルギーがあり、否定的な言葉にはマイナスのエネルギーがあります。常に「疲れた」と言うと本当に元気がなくなります。「楽しい!良かった!美味しかった!ありがとう!」といった言葉を使うと、エネルギーが上がり、自然治癒力が高まります。これも気を高めるちょっとしたコツです。

呼吸法
酸素は人間にとって基本となるエネルギーです。酸素摂取量が多いほど、私たちは様々な活動を行うことができます。しかし普段の呼吸が浅くて生きるための必要最低限度の空気しか入ってきません。よりエネルギーを高めるためには深呼吸をしてもっと多くの酸素を取り入れる必要があります。鼻からゆっくり吸い、倍の時間をかけてゆっくり口から出します。エネルギーが体の隅々まで行き渡り全身がリラックスしていくのをイメージします。イメージすると効果も変わります。仕事の合間や休憩時間、少し疲れたときに目を閉じて深呼吸してみましょう。駅のホームや電車内、カフェなどでもできます。自分で出来る一番簡単な健康法です。

有酸素運動

身体は運動することで細胞の中の小器官、ミトコンドリアがATP(アデノシン三リン酸)というエネルギーを産生します。私たちはそのATPを消費して生命活動を営むことができます。ミトコンドリアは健康や老化と深い関係があることが分かっていることから、ミトコンドリア量や質を上げることでいつまでも若々しく元気で生きていくことができます。ミトコンドリアは特に骨格筋(筋肉)の細胞のなかに多く存在しています。なかでも赤筋(持久力の筋肉)の方に多く含まれているので、持久力の筋肉を鍛える有酸素運動が有効になります。運動の習慣がある人が元気なのは、筋肉がエネルギーを産生しているからなのも、理由のひとつなのです。

自分の意志で行動する

自分自身で決断し行動するとやる気が湧いてきますが、他人からやらされたことはやる気が起きません。だから何事も自分で考え行動していく心構えを持っている人は元気です。創業者の多くはエネルギッシュなのは、自分の意志で人生を歩む強い気持ちをもっているからです。しかし社会では命令される場面もたくさんあります。その時は、やらされたことでも自分の意志に変換することです。例えば言われたから仕方なく掃除をするのではなく、「自分が掃除をしたい」「綺麗にして社会に貢献する」と考え方を変えてみましょう。すると何事も自分のエネルギーにできるのです。

気は伝わり還ってくる


気とはエネルギーなので周囲に伝搬します。水面に石を投げると波が広がるように、私たちの思考や気持ちは周りに影響を及ぼしています。あの人がいるだけで部屋が明るくなるとか、空気が和むというのもは気は空間に広がっているからです。私たちが出した気は必ず自分の元に還ってきます。それは異なった性質であったり、時間差もあります。例えば気分が良いときは、日常や仕事が上手くいきます。良い出会いや気づきがあります。親切な行為はいつか自分に還ってきます。逆にイライラしているときはミスが増え、その処理に時間がとられます。忘れ物をしたり、椅子に足の指をぶつけることもあります。つまり、ポジティブな気を出していると、嬉しい出来事が起こります。逆もしかりです。一日を始める前、物事に取り組む前、自分の心身がどのような状態かが非常に大切であることが理解できると思います。常に頭の中が整理整頓され心配事が少なく、目標が明確であり、体調も優れていること。この状態でスタートできれば、自然と結果も”還ってくる”のです。

気を込める


気を込めるというと、なにか大そうなことをイメージするかもしれませんが、「気持ちをや心を込めて」ということです。難しくありません。気を込めると、そのエネルギーは人や物に伝わります。例えば、心を込めて丁寧に料理を作ると美味しい味になります。そして同じ素材でも作る人によって味が違うといわれているのは、気持ちがそれぞれ違うからです。感謝の気持ちで家や車の掃除をすると、長持ちします。感謝という大きなエネルギーが物に入るからです。『仏造って魂込めず』ということわざがあります。仕上げたものに肝心なものが入っていなければどうしようもないことを言います。肝心なものとは、気(心・気持ち)です。普段何気なくしている事に、身の回りの物に、家族に、いつも会う人に気を込めて接してみませんか?その気持ちは伝わり、相手もとっても幸せになります。

気は変換できる


エネルギーは変換することができます。石油という資源エネルギーを燃焼し発電機を回します。発電機の回転のエネルギーは電気エネルギーを産生し工場や各家庭に送電されます。そして蛍光灯の光やドライヤーの熱などに変換された各種エネルギーを私たちは使用しています。エネルギーは変換されているのです。
気も同じメカニズムを持っています。十分な睡眠と栄養、運動と趣味、掃除と整理整頓など、健康的な日常健康でいつもシャキッと元気な方、周囲におられると思います。その方は特別なことをしているわけではありません。笑顔や感謝の心、スポーツや遊び、睡眠などのエネルギーが高まることを日常の習慣としてたくさん持っておられるのです。そして体の各所で変換されて使用され、いつまでも健康でいたり、元気にたくさんの活動をすることができるのです。体のエネルギーとは食事の栄養だけではありません。様々なエネルギーが存在し変換されて私たちは生きていることを知っておいて下さいね。